未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
294

石川県羽咋市

あの日、秋の空に浮かんで消えた白い「何か」を、私は今でも覚えている。
35年の時を経て、その記憶をたどるように向かったのは、UFOの町と呼ばれる石川県羽咋(はくい)市にある宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」。
そこには、NASAのロケットや旧ソ連の宇宙船など“本物”が並ぶ、不思議な空間が広がっていた。その裏側にいたのは、ひとりの元スーパー公務員だった。
「ハッタリ」から始まった町おこしは、やがて奇跡のような現実を引き寄せていく――。

文= きえフェルナンデス
写真= きえフェルナンデス
未知の細道 No.294 |10 December 2025
  • 名人
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石川県羽咋市

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#1あの日、空に浮かび消えた白い「何か」

あれは、まだ暑さの残る秋の日だった。小学2年生の私は、教室の窓から見える空に、何かが浮かんでいるのを発見した。

飛行機かと思い目を細めて見ると、クリーム色がかった白く丸い物体。それがゆっくりと右方向に動いたかと思ったら、突然パッと消えた。

えっ?

次の瞬間、少し離れた場所に、同じものがパッと現れる。そして次は左方向に移動して、パッと消える。別の場所に現れて、また消えるーー。

な、なんやあれ……。

約1分間、その「何か」は、瞬間移動を繰り返していた。周りの友だちは「わー!」「ぎゃー!」「ひぃー!」などと、騒いでいたような気がする。7歳の私は、不思議な気持ちで、ただじっと空を見つめていた。

あれから35年ーー。あの時の記憶は今も鮮明に残っている。

宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」のオリジナルキャラクター、宇宙人サンダーくん

能登の実家に帰省すると、買い物のたびに、大きなスーパーのある隣の羽咋市を訪れる。そこに「コスモアイル羽咋」という宇宙科学博物館があることは知っていた。中学生の時、遠足で訪れたこともある。正直に言うと、当時の印象は「ちょっと怖い」だった。暗くなるエレベーター、宇宙人の模型、巨大な機械たち。中学生だった私の目には、リアルに作られた模型が中心の、よくある地方の博物館のように見えていた。

ところが最近、驚くべき事実を知った。

あの時見ていたものは、模型ではなく「本物」の宇宙船だったという。しかも、実際に宇宙から帰還したものまである。13億円の価値がある月面探査機を、入館料たった500円(シアター付きでも900円)で見られる。

「そんな本格的な博物館だったの?」

恥ずかしながら、地元育ちなのに私は、コスモアイル羽咋のことをまったく知らなかった。

なぜ、人口2万人の小さな町に、日本で唯一といわれる貴重な宇宙船が展示されているのか。そして、なぜ羽咋は「UFOの町」と呼ばれるようになったのか。

もしかしたら、あの日見た白い「何か」と関係があるのかもしれないーー。

そんな期待と好奇心を胸に、私は改めてコスモアイル羽咋へと向かった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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