
さらりと書いてしまったが、まず、妖怪屋という存在が気になる。
会場へ早めに到着した私は、雪女まつりを運営する相田さんに話を聞きに行った。妖怪屋だけに、ものすごく怖そうな人だったらどうしようと身構えていたけれど、実際に現れた相田さんは穏やかな“人間”だったのでホッとした。
原点は、幼い頃の体験にある。
会津の造り酒屋で生まれ育った相田さんは、幼少期、悪さをするといつも酒蔵に閉じ込められた。真っ暗で冷たい酒蔵は、小さな子にとってどれほど恐怖だっただろう。じっとうずくまっていると、暗闇の奥に気配を感じた。見えないし、なにかはわからない。けれど、確かに“そこにいる”ものを感じていた。
その後、近所の本屋で手に取った妖怪図鑑で「蔵に出る妖怪」を見つけた。「あのとき感じたのは、妖怪だったんだ……」酒蔵での恐怖が、興味へ変わった瞬間だった。相田少年は、妖怪の世界に深くのめり込んでいった。
その後、長らく会社員をしていた相田さんだが、好きなことを仕事にしたいともがく時期があったという。そこであらためて自分を見つめ直し、思い出したのが、子どもの頃に夢中になった「妖怪」だった。
2014年、相田さんは「妖怪で人を笑顔にする」というコンセプトのもと、「妖怪屋」としての活動を始めた。しかし、最初の数年間は周囲の理解も得られず、手探りの日々が続いたという。転機となったのが、「雪女まつり」だった。
この祭りをきっかけに、妖怪を通じた地域活性化の取り組みは大きく広がっていく。「雪女まつり」は、相田さんにとっても特別な存在なのだ。