未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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食堂店主の一言から始まった妖怪たちの「雪乞い」 猪苗代「雪女まつり」がつなぐ人と町の物語

文= 奥村サヤ
写真= 奥村サヤ
未知の細道 No.297 |26 January 2026
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#7狐の妖怪と温泉散策

男性の正体は、大筆狐 聿之進(いちのしん)さん。

狐の妖怪で、普段は人間に化けているという。雪女まつりの最後に行われる大筆書道パフォーマンスのため、東京からやってきた。参加は2回目から。小西食堂ではすっかり顔なじみで、「お昼はここで食べたいから」と、この日も車を飛ばしてきたのだ。

これから、毎年したためている書を「中ノ沢温泉神社」へ奉納するため、参拝に向かうという。せっかくなので、ご一緒させてもらうことにした。

神社は中ノ沢温泉街の坂を登りきったところにある。石段を上った先に、小さな社殿がひっそりと佇んでいた。しんと静まり返った雪のなかで、空気がきりっと澄んでいて気持ちがいい。

聿之進さんは、雪女まつりの参加をきっかけにこの地と縁を結んだ。祭りの日以外でも、町の寄り合いがあれば東京から駆けつけることもあるそうだ。

参拝を終えて階段を下ると、秋田からキャンピングカーで旅をしているというご夫婦に出会った。 おすすめの温泉を尋ねられ、聿之進さんは、中ノ沢温泉にあるさまざまな旅館の湯の特徴をとても丁寧に説明していた。すっかり地元の人のようだ。雪女まつりは、こうして人の縁もつないでいるのだなあと思った。

さて、私にはどうしても行きたいところがある。

会津名物「天ぷらまんじゅう」の店、「日乃出屋」だ。子どもの頃、スキーへ行った帰り道に、ここのアツアツのまんじゅうを頬張るのが何よりも楽しみだった。とにかく、ここの天ぷらまんじゅうが絶品なのだ。

天ぷらまんじゅうは、饅頭を揚げたものだが、油っこさはなく、甘さも控えめ。アツアツをすぐに食べるのが一番おいしいので、ぜひその場で味わってほしい。

とはいえ、スタミナラーメンで満腹になった私は、大好きな天ぷらまんじゅうを食べられなかった。家族へのお土産に買ったものの、どうしても揚げたてが食べたい。

そこで、代わりに聿之進さんに食べてもらうことにした。

痛恨のミスで、饅頭の写真は撮り忘れてしまったが、「サクサクで、やっぱりここの饅頭が一番おいしいですね」という聿之進さんの食レポを、写真代わりに残しておく。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
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