
1937年創業の小西食堂は、90年以上にわたり中ノ沢温泉街で親しまれてきた老舗の食堂だ。西村さんは現在、3代目の父・和男さん、母・とき子さんとともに店を切り盛りしている。
「俺ね、西村家にとって待望の男の子だったんですよ」
何十年ぶりかの“西村家の男子”の誕生に、家族は大喜びだったそう。近所のおじさんや常連客からは「跡とり」と声をかけられて育った。
西村さんは小学校の卒業文集に、こう書いていている。
「店での修行をやり抜き、日本一のラーメン屋になるぞ!」
店の看板メニューは「スタミナラーメン」。醤油ラーメンに、ジューシーなから揚げとゆで卵をのせた、豪快な一杯だ。
「俺の誕生を喜んだ祖母が、記念に考案したメニューなんです。俺が今47歳だから、このラーメンも47周年ですね。ガハハ!」
私はこれを食べたくて、気合を入れて朝ごはんを抜いてきた。
ラーメンがテーブルに運ばれてくると、立ちのぼる湯気に刺激されて思わずお腹が鳴る。
スープを啜ると、あっさりとした昔懐かしい味が広がった。そこに、から揚げの旨みがじんわりと溶け出し、つるつるのちぢれ麺がよく絡む。
孫の誕生は、どんなに嬉しかっただろう。元気に、健やかに育つようにと願いを込め、スタミナも愛情も大盛りにした一杯は、町の人も旅人のお腹も満たし続けることになる。
ジーンとして、スープが余計に沁みた。しかし、軟弱な私の胃袋は、最後のゆで卵を頬張ったところで、限界を迎えたのである。(満腹すぎて、横になりたい…)