
話を聞くと、西村さんは食堂の店主以外の顔も持っていた。
地元の猪苗代高校では非常勤講師として地域探求の授業をしたり、ローカルテレビで県民リポーターも務めている。最近では、こけし職人の見習いにもなったというから驚きだ。
「町おこしっつーんですかねえ。自分でもびっくりなんですけど、もっと町を盛り上げたいと思っていろいろ動いているうちに、肩書きが増えちゃったんです」
気さくで明るい西村さんが、引っ張りだこになるのはわかる気がする。
高校卒業後、市外の飲食店で修業を積み、小西食堂に入った西村さんは、この町の変化をいちばん近くで見てきたひとりだ。
かつての食堂は、昼も夜もお客さんでいっぱいだった。両親はいつも忙しく、子ども心に寂しさを覚えることもあったという。それがいつしか、温泉街を歩く人の姿が減り、賑わいが少しずつ薄れていく。その変化を肌で感じながら、いつしか「町を元気にしたい」と思うようになり、食堂の店主を務めながら活動の幅を広げていった。
しかし、冬のスキーが目玉の町で肝心の雪が降らければ、そもそもお客さんを呼び込めない。どうしたらいいのか……と煮詰まった末の「雪女さん、呼べませんかねえ?」だった。
妖怪屋の相田さんのアイデアで雪女まつり開催が決まると、西村さんも地元を駆け回った。青年会や消防団などの仲間の協力を得て、わずか半月で、温泉街の行事に合わせて大晦日の開催にこぎつけたのだ。
食堂で話を聞いているときも、西村さんのスマホは何度も鳴っていた。どうやら、会場では雪女の帯が見当たらないというトラブルが起きているらしい。人間界から帯をかき集めて、急いで会場へ届けなければいけない。
一緒に車に乗り込むために、慌ただしくお会計を済ませて荷物をまとめていると、隣のテーブルで食事をしていた男性が声をかけてくれた。
「せっかく来たのにすぐに戻るのもなんなので、代わりに中ノ沢温泉を案内しましょうか?」
二人目の神がここにも……!