東日本大震災で被災した農家からもらった「水害に遭ったりんごの木をそのままにしておかない方がいい」というアドバイスを受け、徳永さんは、事務所兼父の自宅と畑、両方の泥かきを同時進行で進めた。畑では木が窒息しないようきれいに洗い、根が剥き出しになった木が枯れないように補修をする。泥がついたりんごは大腸菌が浸透している恐れがあるので、すべて廃棄だ。
周辺地域も合わせると約200ヘクタールが浸水し、被害総額は7億円以上にのぼる。徳永さんは11月、被害を受けた地域一帯を再生させることを目指した「アップルライン復興プロジェクト」を立ち上げ。クラウドファンディングを開始すると、1カ月で1000人以上の支援者から1150万円が集まった。大勢のボランティアの手を借りて自社農園は2カ月ほどでほぼもとの景色に戻り、続いて他の農園の再生にも着手した。
「もともと農家の高齢化や後継者不足で、耕作放棄地も増えていました。災害をきっかけに廃業する農家さんは、本当に多かったんです。自分たちの農園だけが復興しても意味がないし、この地域をりんご産業で再び活性化させたいと思いました」
このとき、徳永さんの気持ちを後押しするように、あるムーブメントが起きる。フランス在住のシェフ、神谷隆幸さんが「被災地で無事だったりんごを買った人に、タルトタタンのレシピを渡します」とツイッター(現X)で声を上げたのだ。
ここから「#被災地農家応援レシピ」というハッシュタグが生まれ、被災地を応援するシェフたちが次々にレシピを投稿。それを見た人たちが、無事だった農作物を購入する動きにつながった。
被災後、徳永さんには次々に農園継承の声がかかり、フルプロ農園の農地は、3年ほどで10ヘクタールまで拡大した。徳永さんは、寄付や資金調達では到底まかないきれない台風19号のダメージを、なんとか売上で解消しようと様々な策を講じる。
目をつけたのは、農地の拡大にあわせて無視できない量になっていた規格外のりんごだ。通常規格外のりんごは回収業者が加工用に1個1円ほどで引き取るが、それでは商売にならない。
そこで、SNSなどで規格外りんごの存在を積極的に発信し、企業にアピールした。こうして実現したのが、コンビニスイーツなどを手掛ける洋菓子製造販売の大手「モンテール」や、神奈川県のドーナツ専門店「ミサキドーナツ」とのコラボだ。