夢中でサンドイッチをほおばっていると、いつのまにか息子は、自宅からもってきたグローブで、徳永さんにキャッチボールをしてもらっている。元野球少年に「いい玉投げるじゃん!」と声をかけられ、まんざらでもなさそうだ。
食べ終わったら、食器とゴミをカフェに持ち帰り、レジャーシートも返却した。本当になにも持たずに手ぶらで来て、ピクニックができてしまった。
気がつけば、11時の開店前に到着してから、3時間以上滞在していた。風を感じながら木陰でごはんを食べるだけで、ふだんパソコンやスマホばかり見ていることで溜まっていた変な疲れが吹き飛んだ気がする。ピクニックを理由に、久しぶりに会えた甥っ子のキュートな笑顔にも癒された。何より、帰りの車にゴミを積んで帰らなくていいのが嬉しい。やっぱり手ぶらは正義である。
徳永さんが徳永農園を継承して10年。現在の農地面積は全部で15ヘクタールだ。社員は7名、売上は1億5000万円になり、生産効率も上がった。「高密植栽培で5億円を目指せ!」という専門家の檄は、今も徳永さんを奮い立たせる。
やめるタイミングも何度かあったはずだ。「やめなくてよかったですか?」という質問に、「もちろんです」と頼もしくうなずく徳永さんの姿は、120年前、水害に屈しないためにりんご栽培を始めたという曽祖父・初太郎さんの姿に重なった。
耕作放棄地の借り受けや継承の話は、いまも途切れない。自社の経営と地域全体の農業活性化の両輪を見ながら歩みを進めるが、「まだまだ厳しいことも多い」と言う。それでも、最後にポロっと教えてくれた言葉に、徳永さんの人柄を感じた。
「これ以上は経費がかかって農地を増やせないなっていうタイミングで、本当に良くしてもらった農家さんが亡くなって、そこを担ってほしいって言われると、もう借りざるを得ないですよね」