徳永さんが挑戦する姿勢を見てきた小林農園の小林さんも、農園を徳永さんに託したひとりだ。徳永さんは、2024年に運営を引き継いだ小林農園の直売所を改築して、カフェを開くことを決めた。
カフェメニューを考案しながら徳永さんの脳裏に思い浮かんだのは、自分自身の支えになった、ある体験だった。
「被災したときに来てくれたボランティアの人が、翌年以降も繁忙期に手伝いにきてくれて、一緒に農作業をしながらごはんを食べたりもして。今もよく作業の合間に畑でごはんを食べるんですけど、めっちゃ気持ちいいんですよ。それで、これを価値にしたらいいんじゃない?っていう話になったんです」
そこで、カフェで購入したフードメニューを農園で食べられる「ピクニック」をサービスに加えることに。さらに、「ほかがやっていないことをやらないとお客さんはきてくれない」と、愛媛の「蛇口からみかんジュース」を真似て、「蛇口からりんごジュース」も設置した。蛇口の上にりんごジュースを入れた容器を設置し、高低差を利用して水圧で落とすという原始的な仕組みだ。
2024年10月に「ガーデン&カフェピクニック」を開くと、2カ月で1000組という予想以上の客がピクニックを楽しんだ。翌2025年も、りんごの収穫時期である9月~11月を中心に1000組が来訪。半数ほどは首都圏からの来客だ。「蛇口からりんごジュース」をインスタグラムで見て訪れたという人も多くいた。
「家族連れだけじゃなくて、いままで農園に接点がなかった大人にとっても、この時期のりんごがどういう状態なのかとか、りんごがどういうふうに成長していくのかとか、スーパーに並ぶ前の状態を知ってもらうきっかけになったらいいなと思います。実は昨日も、学生時代の仲間だっていう女性が4名くらいで農業体験に来てくれたんですよ」