未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
ver280

長野県佐久市

長野県佐久市望月に、一風変わった民芸館がある。展示品に触れてもいいし、コーヒーを飲んでもいい。館長は国内外で活躍するアートキュレーターで、設立者は元教師。「平和と手仕事」を掲げるユニークな民芸館の秘密に迫った。

文= 座光寺るい
写真= 座光寺るい
未知の細道 No.ver280 |12 May 2025
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
長野県佐久市

最寄りのICから【E18】上信越自動車道「佐久IC」を下車

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#1アート講座の会場だった民芸館

「民芸」と聞いてどんなイメージを浮かべるだろうか。 おばあちゃんの家で出てきそうなお茶碗や小皿、コケシや手毬などの伝統的なおもちゃ。失礼ながら私にとって「民芸」は、お年寄りが昔を懐かしんでコレクションするもの、というイメージだった(ごめんなさい!)。むろん、民芸館を訪れようと思ったこともなかった。

その私が2023年の秋、なぜか毎月のように民芸館に通った。

目的は「アート・コーヒー・クラブ」という美術講座。地元に住む美術の専門家が、全7回にわたって人間の歴史と美術のかかわりについて案内してくれるというものだ。子どもが学校からチラシを貰ってきてその存在を知った。

チラシには「気軽で楽しい講座」と書かれている。1回2,000円、7回通しで参加すると12,000円で、1回分お得!しかも毎回コーヒーと手作りのおやつ付き。

生まれつきの障害で言葉を話すことができない次女を2015年に出産してから、私は言語に縛られない「アート」に興味を持つようになった。でもアートのことはさっぱりわからないし、学校でも教わった記憶がない。ずっと道案内を探していた。

……これは行くしかない!

意気揚々と連絡先のメールアドレスに申し込む。会場は、新幹線佐久平駅から車で約30分ほどの長野県佐久市望月にある「多津衛民芸館」。

フランスの芸術村・バルビゾンに似ているという理由でこの場所に建てられた多津衛民芸館

初日、Google mapにタイプすると、随分山奥を示した。田んぼ道を通り過ぎ、坂を登り、「え、まだここ登るの?」という急な山道をいくと、「多津衛民芸館」は見晴らしのいい小高い場所に現れる。

それから私は、講座の日がくるたびに「おぅ、まだここを登るんだった」と思いながらハンドルを握って民芸館に通った。

確かに「気軽で楽しい講座」ではあったけれど、気軽であることと密度が濃いことは別の話だ。民芸館の展示品に囲まれながら、これまで知らなかった思いがけないアートの考え方と、それを意欲的に学びにくる地域の人々の存在を知った。

アート・コーヒー・クラブの様子(画像提供=多津衛民芸館)
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。