未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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時を超えてよみがえった114歳の女工銭湯 人が人を呼ぶまちの平和な社交場へようこそ

文= 座光寺るい
写真= 座光寺るい
未知の細道 No.308 |10 July 2026
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#4「私が絶対にここを復活させるんだ!」

知り合いが増えるにつれ、桐生というまちへの思いが増した山本さんは、二渡さんや川口さんに「桐生に移住したいなあ」と相談するようになった。

移住するなら、自分で納得できる商売がやりたい。バイク店の仕事も楽しかったが、バイクメーカーとの取引などで、納得できないこともあったからだ。

何度も相談するうちに、二渡さんが「俺がずっと通ってたのに、閉じちゃった銭湯があるから、そこを復活させてくれよ」と冗談交じりに言った。それが、一の湯だ。

重要伝統的建造物群保存地区の建物に指定されている一の湯の外観

2021年4月、二渡さんに連れられて、重要伝統的建造物群保存地区の一角にある一の湯を訪れた。山本さんはそれまで特に銭湯に思い入れはなかったが、その堂々とした建物に一目惚れ。ただ、既に閉業から3年が経ち、大家さんが誰なのかもわからない状態だった。

そこで頼ったのが、「プラスアンカー」の店主、川口さんだ。実は、川口さんの本業は不動産業。まちのことに関わる人がつながり合える場所をつくりたいと、2014年に古民家カフェを開いたのだ。川口さんは、大家さんを探し出してくれただけでなく、地元の工務店や電気屋などにも相談してくれた。

さらに、二渡さんが紹介してくれた地元紙の記者・高橋洋成さんが、かつての常連客や関係者を調べてはつないでくれた。

こうして山本さんは、「埼玉から来て一の湯を復活させたい女性」としてじわじわと地域の人たちに知られていく。そして、二渡さんから話を聞いた2ヶ月後には、二渡さんと川口さん、記者の高橋さんのほか、地元工務店の人など、5、6人で一の湯の建物を内見できることになった。

一の湯と出会ってからの出来事を思い返しながら語る山本さん

当日、現地集合して建物の中に入った山本さんは、声を上げる。

「うわ、なにこれ……めっちゃかっこいい!」

ひと目見て「私が絶対にここを復活させるんだ!」と心に決めた。

そこから山本さんは、あちこちで「一の湯を復活させたい!」と口に出した。経営をしたこともなければ、銭湯について詳しいわけでもなかったが、どういうわけかやれる気がした。

プラスアンカーの川口さんは、水道屋さんや電気屋さんにも修復の可能性について聞いてくれた。気づいたら、川口さん、二渡さん、高橋さん、工務店の社長で、「一の湯復活プロジェクト」という名前のついたLINEグループができ上がっていたという。

一の湯をよく知る地域の人たちからその歴史を聞いたという

とはいえ、山本さんにはまだ埼玉でのバイク店の仕事があった。その頃には社員となり、貴重な女性店員として頼りにされていたため、なかなか辞めるとは言い出せない。

「やりたいのは私なのに、周りのみんながあれこれ動いてくれてて、なんで私ひとりが埼玉にいるんだ……!」

桐生に通いながらも、もどかしさを感じた。

「このままでは前に進めない」と思った山本さんは、10月、不動産を本業とする「プラスアンカー」の川口さんに「まーちゃん、次の4月には引っ越すから、猫2匹とバイクで住める家をさがして!」と依頼。なにも決まってはいなかったけれど、住む場所さえあればなんとかなるだろう、と考えたのだ。川口さんはすぐに月4万円の1LDKを探してくれた。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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