
従来のとうきびワゴンでは、「北海道産のとうきび」を茹でるか、市販のタレをつけて焼いて、300円で販売していた。
しかし、北海道では旬の時期になると100円前後でおいしいとうきびが売っている。それを買って、家で茹でておやつとして食べるというのが北海道の日常的な風景だという。だから、ほとんどの札幌市民にとって、とうきびワゴンの売り物は、3倍の値段を払って買う価値のあるものと思われていなかったそうだ。それは、山賀さんも同じ。そこで、徹底的に味にこだわることから始めた。
まず、自分で食べて「うまい!」と思える糖度の高いとうきびを作る農家を探し、契約。販売する時は、「北海道産」ではなく、産地と品種をアピールするようにした。
「共和町で作っている恵味ゴールドという品種が非常においしくて、最初はそこの農家さんに作ってもらっていたんですよ。でも高齢で農家をやめることになったので、いまは長沼町で採れたゴールドラッシュです。昨年のお盆に出したとうきびの糖度は最高24度でした。普通の赤身のメロンで20度ぐらいなので、とんでもない甘さでしたよ」
次に、タレの開発に手を付けた。明治24年から味噌・醤油の製造を手掛ける札幌の老舗・福山醸造と組み、日高で採れた昆布を使っただし醤油を使用。北海道で昔から使用されているてんさい糖と合わせた。さらに、「大通公園でやっているんだから、大通のものを入れたいよね」ということで、テレビ塔のすぐ近くのビル屋上で作られているアカシア蜂蜜を加え、オリジナルの砂糖醤油を作った。
SNSも戦略的に活用。単純に情報発信するのではなく、北海道キヨスクの時代に生まれたもののあまり活躍の場がなかったキャラクター「きびっち」を主役に据えてXやインスタグラムに投稿することで、ファン作りを意識した。これが功を奏し、香港やオーストラリアから、「きびっちに会いたい」と大通公園まで来た人もいたという。