未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
285

販売本数1日最大3000本!?なぜそんなに人気なの? 札幌名物「とうきびワゴン」の謎に迫る!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.285 |25 July 2025
この記事をはじめから読む

#6低迷挽回の秘策

従来のとうきびワゴンでは、「北海道産のとうきび」を茹でるか、市販のタレをつけて焼いて、300円で販売していた。

しかし、北海道では旬の時期になると100円前後でおいしいとうきびが売っている。それを買って、家で茹でておやつとして食べるというのが北海道の日常的な風景だという。だから、ほとんどの札幌市民にとって、とうきびワゴンの売り物は、3倍の値段を払って買う価値のあるものと思われていなかったそうだ。それは、山賀さんも同じ。そこで、徹底的に味にこだわることから始めた。

まず、自分で食べて「うまい!」と思える糖度の高いとうきびを作る農家を探し、契約。販売する時は、「北海道産」ではなく、産地と品種をアピールするようにした。

長沼町の三木田農園から仕入れているゴールドラッシュ。(画像提供:山賀さん)

「共和町で作っている恵味ゴールドという品種が非常においしくて、最初はそこの農家さんに作ってもらっていたんですよ。でも高齢で農家をやめることになったので、いまは長沼町で採れたゴールドラッシュです。昨年のお盆に出したとうきびの糖度は最高24度でした。普通の赤身のメロンで20度ぐらいなので、とんでもない甘さでしたよ」

次に、タレの開発に手を付けた。明治24年から味噌・醤油の製造を手掛ける札幌の老舗・福山醸造と組み、日高で採れた昆布を使っただし醤油を使用。北海道で昔から使用されているてんさい糖と合わせた。さらに、「大通公園でやっているんだから、大通のものを入れたいよね」ということで、テレビ塔のすぐ近くのビル屋上で作られているアカシア蜂蜜を加え、オリジナルの砂糖醤油を作った。

とうきびワゴンのSNSの主役としてフル回転するきびっち。(画像提供:山賀さん)

SNSも戦略的に活用。単純に情報発信するのではなく、北海道キヨスクの時代に生まれたもののあまり活躍の場がなかったキャラクター「きびっち」を主役に据えてXやインスタグラムに投稿することで、ファン作りを意識した。これが功を奏し、香港やオーストラリアから、「きびっちに会いたい」と大通公園まで来た人もいたという。

このエントリーをはてなブックマークに追加

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。