
取材の日、西3丁目の噴水の周囲を見渡せば、ほとんどの人がとうきびを手にしていた。平日の午後にも関わらず、屋台にはひっきりなしにお客さんが訪れる。
旅行中の若いカップルは「女性ユーチューバーがここに来て、めっちゃおいしいって言ってたから、絶対食べに来ようと思っていました。ほんとおいしいです!」と嬉しそう。
茨木から来たという母親と娘も「ここはすごく有名ですよね。絶対食べたいと思ってきました。ちょうど甘いね、おいしいねって言ってところだよね」と頷きあっていた。
僕は、たまたま話を聞いた二組が口を揃えて「絶対食べたい」と思うような目的地になっていることに驚いた。
「僕らの国では、バターを塗って塩を振って食べるんだ。醤油はかけないけど、よく似ている」と言ったのは、デンマークからの旅行者3人組。「おいしい?」と聞くと、3人とも「イエス!」と声を揃えた。
取材後、山賀さんが、翌日から出す予定だったハウス栽培の生とうきびを焼いてくれた。アツアツのとうきびを手に取ると、特製砂糖醬油の匂いが超速で鼻腔を通り抜けて、脳みそに香ばしさの花火が上がった。118年前の石川啄木も、どこか懐かしいようなこの匂いに鼻を膨らませていたのかもしれない。
僕はたまらず、とうきびにむしゃぶりついた。