未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
ver308

群馬県桐生市

とある取材で群馬県桐生市を訪れることになった。調べてみると、人口は減少し、高齢化率も上昇しているのに、ここ数年は個性的な店が次々とオープンしている。いったいなにが起こっているのか? 隣接する伊勢崎市に住む友人に聞くと、一番おもしろいのは114年の歴史を誇る銭湯「一の湯」だという。私は現地へ向かった。

文= 座光寺るい
写真= 座光寺るい
未知の細道 No.308 |10 July 2026
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
群馬県桐生市

最寄りのICから【E50】北関東自動車道「太田藪塚IC」を下車

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#1「一の湯」に捧げる初体験

5月某日の夜、桐生市内に到着すると、強い雨が降っていた。宿で少し小ぶりになるのを待って、21時過ぎ、群馬県桐生市の桐生新町にある銭湯「一の湯」に向かう。

友人が教えてくれたこの銭湯についてインターネットで調べてみると、一の湯には114年の歴史があったものの、2018年に閉業。その後、埼玉からやってきたひとりの女性が奮闘し、2023年に復活したのだという。

静かな通りの一角で、存在感を放っていた夜の一の湯

一の湯も含めた桐生新町というエリア一帯は、「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている。古い町並みが保存されている地区をゆっくりと車を走らせると、趣ある三角屋根と「一の湯」の看板を見つけた。雨は上がっていたけれど、あたりは真っ暗だ。青色の暖簾を照らすオレンジ色のあかりが、ひときわ目を引く。建物の反対側にある駐車場には、車が4台ほどとまっていて、20代くらいの若い男性が3人ほど、一の湯に吸い込まれていった。

車をとめて、私も彼らを追いかけてみたが、番台には誰もいない。うろうろしていると、数分後に「ああ!ごめんなさいね~」と言いながら女性が番台にやってきた。この人物こそ、一度は廃業した一の湯を2023年に復活させた山本真央さんだ。山本さんが戻った番台は、なんだかぱあっと明るくなったみたいだ。

埼玉から移住し、一度は廃業した銭湯「一の湯」を復活させた山本真央さんと、看板犬のシカクくん

450円を支払い、脱衣所に入ると、なかでは6人ほどの女性たちが着替えをしている。30代くらいの女性とその子どもが2人、あとは60代~70代くらいだろうか。歴史を感じる木製のロッカーに貴重品を入れて藤のかごに服を脱ぎ、持参したタオルを持ってガラリと浴室の入り口を開けた。洗い場には、体を洗っている60代と思しき女性がふたり。「お邪魔します」と声をかけると、「こんばんは」と返してくれた。

こじんまりした浴室内は、明るい雰囲気だ

えっと、風呂椅子は……この緑の小さいベンチみたいなのが風呂椅子なのかな。うん、どうやらそうっぽい。風呂桶はケロリンだ。おお、そしてやっぱり銭湯って山の絵が描かれているんだなあ。

心の中で静かにテンションがあがる。
なにを隠そう、私、銭湯に入るのが初めてなのだ。『ドクターX』というドラマで、米倉涼子扮する主人公の女医が、銭湯に入って「気持ちいい~!」と叫ぶシーンが大好きで、以来、ずっと銭湯に憧れてきた。

緑色のミニベンチのような風呂椅子は、この銭湯にもともと残されていたもの

風呂椅子(らしき緑のミニベンチ)に腰掛けて体を洗い始めると、「シャワーのお湯も薪で沸かしています。大切に使ってください」という注意書きが目に飛び込んできた。うわ、まじか。私も自宅で薪ストーブを焚くから、薪を焚き続けることの苦労は、よくわかる。大変な重労働だ。そろそろとシャワーで体を流し、いざ、浴槽へ。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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