
群馬県桐生市
とある取材で群馬県桐生市を訪れることになった。調べてみると、人口は減少し、高齢化率も上昇しているのに、ここ数年は個性的な店が次々とオープンしている。いったいなにが起こっているのか? 隣接する伊勢崎市に住む友人に聞くと、一番おもしろいのは114年の歴史を誇る銭湯「一の湯」だという。私は現地へ向かった。
最寄りのICから【E50】北関東自動車道「太田藪塚IC」を下車
最寄りのICから【E50】北関東自動車道「太田藪塚IC」を下車
5月某日の夜、桐生市内に到着すると、強い雨が降っていた。宿で少し小ぶりになるのを待って、21時過ぎ、群馬県桐生市の桐生新町にある銭湯「一の湯」に向かう。
友人が教えてくれたこの銭湯についてインターネットで調べてみると、一の湯には114年の歴史があったものの、2018年に閉業。その後、埼玉からやってきたひとりの女性が奮闘し、2023年に復活したのだという。
一の湯も含めた桐生新町というエリア一帯は、「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている。古い町並みが保存されている地区をゆっくりと車を走らせると、趣ある三角屋根と「一の湯」の看板を見つけた。雨は上がっていたけれど、あたりは真っ暗だ。青色の暖簾を照らすオレンジ色のあかりが、ひときわ目を引く。建物の反対側にある駐車場には、車が4台ほどとまっていて、20代くらいの若い男性が3人ほど、一の湯に吸い込まれていった。
車をとめて、私も彼らを追いかけてみたが、番台には誰もいない。うろうろしていると、数分後に「ああ!ごめんなさいね~」と言いながら女性が番台にやってきた。この人物こそ、一度は廃業した一の湯を2023年に復活させた山本真央さんだ。山本さんが戻った番台は、なんだかぱあっと明るくなったみたいだ。
450円を支払い、脱衣所に入ると、なかでは6人ほどの女性たちが着替えをしている。30代くらいの女性とその子どもが2人、あとは60代~70代くらいだろうか。歴史を感じる木製のロッカーに貴重品を入れて藤のかごに服を脱ぎ、持参したタオルを持ってガラリと浴室の入り口を開けた。洗い場には、体を洗っている60代と思しき女性がふたり。「お邪魔します」と声をかけると、「こんばんは」と返してくれた。
えっと、風呂椅子は……この緑の小さいベンチみたいなのが風呂椅子なのかな。うん、どうやらそうっぽい。風呂桶はケロリンだ。おお、そしてやっぱり銭湯って山の絵が描かれているんだなあ。
心の中で静かにテンションがあがる。
なにを隠そう、私、銭湯に入るのが初めてなのだ。『ドクターX』というドラマで、米倉涼子扮する主人公の女医が、銭湯に入って「気持ちいい~!」と叫ぶシーンが大好きで、以来、ずっと銭湯に憧れてきた。
風呂椅子(らしき緑のミニベンチ)に腰掛けて体を洗い始めると、「シャワーのお湯も薪で沸かしています。大切に使ってください」という注意書きが目に飛び込んできた。うわ、まじか。私も自宅で薪ストーブを焚くから、薪を焚き続けることの苦労は、よくわかる。大変な重労働だ。そろそろとシャワーで体を流し、いざ、浴槽へ。