
石川県鹿島郡
1300年前、奈良時代の僧、泰澄大師が開いたと伝わる能登半島の不動滝。能登の実家に帰省するたびに、一度は行ってみたいと思っていた滝だ。毎年7月5日に行われる滝開きの法要を目指し、私は見物のつもりで中能登町へと向かった。地元の人たちが大切に守ってきたというこの滝には、もうひとつ、意外な顔があった――。
最寄りのICから【E41】能越自動車道 氷見ICを下車
最寄りのICから【E41】能越自動車道 氷見ICを下車
滝行、というものに、私はずっと憧れだけを抱いていた。あの白装束、あの気合いの入った真言、あの「悟りをひらいた顔」。テレビで見るたび、いいなあ、と呑気に思う。自分がやるとは、露ほども考えていない。
だから、石川県中能登町の不動滝で毎年7月5日に「滝開き」があると聞いたときも、最初は見物のつもりだった。滝壺で開かれる法要に参加した白装束の人たちが次々と滝に打たれる。その様子を写真に撮りつつ、茶でもすすって眺めていよう。優雅な計画である。


この日、金沢と能登半島を結ぶ国道159号線を車で走らせ、たどり着いたのは、田んぼの緑がどこまでも続く山あいだった。駐車場から登り坂を100メートルほど進むと川のせせらぎとともに、森を切り抜いたような空間があらわれる。ここは石川県中能登町井田、石動山の麓。
「かんじーざいぼーさーぎょじんはんにゃーはーらーみーたー」
現地に着くと、すでに読経が響き渡っていた。お堂の先には高さ20メートルに及ぶ滝が見える。参加者たちが白装束を身にまとい、法要の始まりを待っていた。その光景すべてが神聖な雰囲気を醸し出している。
10時から行われる法要に合わせ、早めに現地に到着していた。今回、案内してくれたのは不動滝を護る会の事務局を務める、長谷行祥(ぎょうしょう)さん。夫婦で不動滝のお世話係をしているのだという。
待っている間、白装束を身につけ近くに座っていた男性に声をかけた。地元・井田出身、30歳の福多さんは今回が初参加。何度も参加している高柳さんに連れられて来たそうだ。2人は法要の最後に、伝統的な郷土芸能「天平太鼓」を演奏するのだという。
周りにいた地元の人たちも、ここぞとばかりに法要の説明をしてくれる。中能登町の人の良さが感じられた。
参加者が続々と集まってくる。銅鑼が鳴り響き、法要が始まった――。