未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
313

里山の風景を守る小さな工房を訪ねて 革小物を作りを通して、キョンの一生に思いを馳せる

文= 竹田りな
写真= 竹田りな
未知の細道 No.313 |25 September 2026
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#3本当にやりたいことに気づいた大学時代

臨床心理士の資格を取るために、大学では心理学部に入った。自身の経験を生かして、子どもを支援する立場になりたいと考えたからだ。

入学後はいくつかのボランティアサークルに所属し、子どもをサポートする活動を始めた。そのうちのひとつが千葉県の南房総に子どもたちを連れてきて、現地の子どもたちと一緒に田んぼの手伝いをすること。月に1回、田植えや稲刈りなどの農作業を行った。

その傍らでお手伝いに行っていたのが、農家の団体「三芳村生産グループ」の田んぼ。1970年代から無農薬・無化学肥料で農業を続けていて、多品目少量生産に取り組んでいた。子どもたちとの活動とは別に、農作業を手伝うこともサークル活動のひとつで、飼っていた鶏を捌く作業も経験した。

「初めて見た時は、もうお肉を食べられないかなと思ったんですが、その日の夜から食べてましたね。むしろ、これまではお肉を残すこともあったし、命のかけらを見落としてきたんじゃないかなと反省して。できるだけ、動物の命をいただいていることを意識できるように、生産の現場の近いところで生きていきたいなと思うようになりました」

ただ、この時は、農業を仕事にしようとはまったく思っていなかったという。

大学4年生になり、進路に迷った。大学院に進んで心理士の資格を取り、子どもと向き合うことが、本当にやりたいことなのだろうか。悩んだ末に、1年間の休学を決めた。

休学中も、自宅から南房総に足を運んだ。農作業に没頭したり、生産者と話をしたりすることで少しずつ気持ちがほぐれ、目の前に広がる田畑の風景にも癒された。でも、あと20年もしたら、農家の後継者不足でこの景色もなくなってしまうかもしれない。

「やっぱり私は農業に関わっていきたい」

そう思ったものの、いきなり就農する覚悟はなかった。それに、0から1を生み出すのは得意だが、1から先をコツコツ取り組むのはどちらかといえば苦手なタイプで、自分が農業に向いているとも思えなかった。

農業に関係する仕事を探すなかで、JAの出版団体に就職が決まった。

藍染の革。傷を残したまま加工している。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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