
平日は、農業雑誌の編集者として日本全国の農業に関する情報を集め、週末には南房総に通い続けた。
ある時、鳥獣駆除の担い手である猟師が少なくなって困っている生産者を見て、「私が狩猟できればいいのでは」と思い立つ。
そこで見つけたのが、南房総にある「ヤマナハウス」。里山をシェアすることを目指し、月2回ほど各地から若者が集まってDIYや狩猟体験などの講座も行っていた。大阪谷さんはすぐに参加を決め、月に2回はヤマナハウス、2回は農家を訪ねる生活が始まった。
ヤマナハウスでは、狩猟を学びつつ、捕獲現場にも同行した。狩猟後の肉は解体し、みんなで分ける。その一方で、皮は廃棄されていた。
「これ、何かに使えないかな」
調べてみると毛皮は独学でも作れそうだとわかり、さっそく作ってみることにした。捨てられるはずの皮をもらい自宅に持ち帰り、風呂場で作業をしていたところ、母親に見つかってしまう。
「母には『何をやってるの』と怒られました。腐敗しないように途中で冷蔵庫に入れたら、また怒られて」
さらに庭に天日干しして乾燥させる必要があり、近隣の住人たちからも「お宅の娘さんは、何をやっているの?」と心配されたそうだ。でも、興味のあることに突き進む大阪谷さんは、簡単には揺るがない。
そうして1ヶ月ほどかけてできた毛皮第一号が、キョンの皮で作った腰巻きだ。農作業などをする時に腰につけて、地面や切り株に座るときにお尻に引いて使う。動物がブルブルと体を振ると簡単に水を弾くように、水分や汚れがついても払うだけで取れるそうだ。


その後も、タヌキやシカ、イノシシなどの皮をもらってきては毛皮を作った。
そうしているうちに、「ジビエの残さの活用を一緒にやってくれないか」と知り合いから声をかけられる。編集者として3年ほど働き、そろそろ生き方を変えようと思っていた大阪谷さんは、その会社への転職を決めた。