
この店を立ち上げてもう15年になるというオーナーの橋本貴洋さんと由紀子さん夫妻に話を伺った。
ふたりがセレクトしたCDはメジャーなものではなく、いわゆるインディーズと呼ばれる独立系レーベルから出されたCDが中心だ。日本を含め、世界中のインディーズの音楽、約4000枚のCDがあり、その全作品が常に試聴できるのがこの店の魅力のひとつだ。取り扱いするジャンルも、橋本さんが「オールジャンル」というとおり、ロック、ポップス、ジャズ、ワールド、シンガーソングライター、クラブミュージック、エレクトロニック・ミュージック、ポストクラシカルと呼ばれるいわゆる現代のクラシック音楽……と幅広い。
店内にはこれらのジャンルごとにコーナーと視聴機があり、店の入り口近くには「今月のオススメ」というコーナーもある。
橋本さんと由紀子さんは、それぞれが仕入れを担当する。「一日中、音楽を漁っています」と由紀子さんが言う通り、ふたりの仕事はとにかくまず音楽を聴き、探すこと。由紀子さんは、音色や響きを重視したアンビエントミュージックやポストクラシカルなどが得意分野だといい、一方、橋本さんはビートが聞いた音楽やバンドなどを主に担当しているという。
こうしてお互いの得意ジャンルを分担しつつ、双方が「良い!」と判断した作品は、ジャンルを越えて「今月のオススメ」へ集めるのだという。
音楽に明るくない私にとって、パッと見て、今まで聞いたことも見たこともないアーティストのCDばかりだ。でもCDジャケットはどれも美しく、並んでいるとひとつひとつ手に取りたい衝動にかられる。
このすべてのCDに手書きのポップがついていることに気づいて、さらに驚く。ふと自分が学生の頃のCD全盛時代を思い出した。まだ音楽の配信サービスはなかった。みんながお店で新しいCDを楽しみに買っていたあの頃、大きなCDショップはどこも必ずこの手書きのポップがあった。それと同じように、小さな文字でぎっしりと、そのCDの内容を熱く説明してあるのだ。
「やっぱりちっちゃい紙に手書きでガーって書いてあると、音楽が伝わる。音はすぐ聞けるわけじゃないから、お客さんはまず文字から音を想像する。そこから視聴につながっていく。印刷したものだと、こうはいかない」と橋本さん。
これをふたりで4000枚書いているわけだ。いやこれまで売れた分を考えたら、何万枚になるのだろう?
「書いていますよ、ずっと! この手書きポップは、自分たちが勤めていた頃からの、きっかけだしね」とふたりはいった。そう、実は橋本さんと由紀子さんは、かつて若者なら誰でも知っていた有名な大手CDショップ店で働いていたのだった。