
こうして順調にmore recordsの運営は進んだ。集客を目的とした店内ライブを毎月開催するようになったほか、自社レーベルも運営し、海外作品を探して契約・リリースしていた。これまでレーベルから出した作品は5作品だ。
ふたりが考案した新たな取り組みもある。それがmore recordsのサブスクリプション、「CD定期便」である。
定期便はある時、千葉から来てまとめ買いしてくれる常連客から「お店に行けないから、なんでもいいから送ってほしい。この店のセレクトなら、もう絶対に大丈夫とわかっているから!」と要望されたことがきっかけで始まった。
「待てよ、これはもしかしてこう言う人がいっぱいいるのではないだろうか、と思ったんですよ」と橋本さん。音楽の探し方がわからない人にとってもこれは、いいきっかけになるだろう。
定期便は至ってシンプル。お客の好みはあえて聞かずに、店として「今月は絶対にこれを聴いてほしい」というCDを送る仕組みである。基本的にはインディーズの新譜ばかりなので、知っている音楽が届くことはまずない。1枚コースは送料込み3000円。複数枚のコースもあり、3枚目以降は、お客さんの好みも聞いて反映する。利益は重視せず、お客さんの生活のなかにもっと音楽をとり入れて欲しい、という気持ちのほうが強い。
「日本でやっているのはうちだけでしょうね」と橋本さんがいうとおり、噂を聞きつけたテレビ局からまたも取材が入り、大きな反響があった。それもあって定期便の登録者は開始当初に80~90人程度まで増え、現在は少し落ち着いて約50人ほどだという。
「定期便は、うちの『究極』だと思う」と橋本さんは続ける。たしかにCDという実態のあるメディアが自宅にポン! と届けられること自体が、今の時代には新鮮だろう。一方でこの告知はオンライン上だ。実店舗での接客とCD、それにオンラインがあることで、このサブスクリプションが成り立つわけだから、なんとも面白い。
それにしても、この店の音楽のセレクトへの揺るぎない信頼があってこそ。「CD定期便」は、まさにこの店の究極のサービスなのだ。