学芸員チームと盆栽技師チームが連携し、普通の美術館の収蔵品管理や展示とは違ったさまざまな工夫がなされている。盆栽は庭園とバックヤードで基本的に管理されているが、屋内での盆栽展示では、原則として週1回展示替えをするというから驚きだ。盆栽を屋内に長期間展示するのは、盆栽の生育上、難しい。生きた展示物のため、季節ごとの姿の変化に合わせてキャプションの内容も毎週作り替えているという。
通常の美術館は2、3ヶ月で展示替えが多い。1週間ごとの展示替えは働いている人たちは大変でしょうね、と私が問うと、田口さんは「そうですね。でもお客さんにとっては毎週展示が変わります。実際に毎週、見にくる方もいらっしゃいます」と田口さん。
夏季は、館内の冷房による乾燥や屋外の暑さとのギャップが盆栽の負担になるため、屋内での盆栽展示をおさえている。「特に7月、8月は水石の展示、9月前半は盆石(漆塗りの黒い盆の上に自然石や砂を用いて自然の情景を描き出す縮景芸術)の展示を毎年行っています」とのこと。
屋内展示室は、まず盆栽について深く学べるパネル展示から始まる。さらに企画展示室へと続く。私が訪れた9月には、企画展として盆石を展示していた。明治時代に女性の教養として盛んだったという盆石。初めてみた盆石は、盆の中の景色も、砂や石を並べるための道具類もすべて小さく、まるでおままごとのように可愛くもあり、展示が終われば全てもとに戻し消えてしまう一回限りの作品であるため、儚さも漂う。
さらに進むと「座敷飾り」がある。 3つの座敷を再現した展示室で、それぞれに季節の見頃の盆栽とそれに合わせた掛け軸や卓(しょく。盆栽や花の飾り台)を組み合わせ、展示する部屋だ。学芸員と盆栽技師の連携のメインとなるところでもある。「この座敷飾りを見たくてやってきた」という来館者も多いという。座敷の建築様式も、3部屋それぞれに違いがあり見事だ。
私が訪れた日は、3つの座敷に、暑い季節に爽やかさを感じせる雑木盆栽(葉物・花物・実物などの盆栽の総称)が盆石や掛け軸とともに飾られていた。
盆栽の鑑賞では、まず枝葉の開き方や幹の見え方を正面から見極め、その後、腰を落として見上げることで、大木を凝縮した表現を味わう、という。私も習った通り座敷の前で、ひざを曲げて腰を低くしてひとつひとつの盆栽を見上げてみる。すると素人ながら鉢のなかの小さな木から豊かな自然が見えてくるような気がするから、不思議だ。
「腰を落として見ていると、盆栽を知っているな、ということがわかります」と田口さんは笑顔でいった。