未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
315

100年続く盆栽の聖地 静かなる盆栽村を歩く

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.315 |13 October 2026
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#4美しき庭園と銘品

明治の元勲のものと伝わる由緒ある盆栽。根張り、立ち上がり、幹模様、枝ぶり、葉が鑑賞のポイントだ

続いて屋外に出てみる。美しい盆栽が遮光ネットの下にずらりと並べられ、その間を歩いていく。

いわゆる私たちが抱いている盆栽のイメージでもある、松や檜などの、重厚な「松柏盆栽」。それから葉や花、実がある美しい雑木盆栽の数々。なかには明治期の総理大臣のものと伝わる歴史的な松柏盆栽や、つい最近、総理大臣を輩出した家から寄贈された雑木盆栽が展示されている。どの盆栽もとても美しい。

盆栽は「植木を『自然』として見せるため、人の手で剪定、針金かけ、植え替え、根切りなどを継続的に行う芸術です」と田口さんが言う通り、ひとつひとつの盆栽は、まるで自然のなかの大木のようでありながら、実は枝も葉も、幹も小さい。大きく育たないように手をかけられているのである。非常に人工的な芸術なのだ。

庭園全景

庭園へ出てみると、さらに目を見張った。池の周りに大きな美しい盆栽が点在しており、来館者は庭を巡りながらゆったりと盆栽を見られるようになっている。

千代の松。人の手では動かせない大きさだ

「千代の松」と名付けられたこの盆栽は、館内最大の盆栽。美術館の目玉でもある。また「青龍」と名付けられた五葉松は、その名の通り、竜のような姿が特徴的だ。来館する子どもたちから人気があると言う。

ジンとシャリが非常に美しい青龍

この青龍のように見事な松柏盆栽には幹や枝に所々、白く枯れた箇所が見られる。これも盆栽の重要なポイントの一つだ。幹の枯れた部分は「シャリ」、枝先の枯れた部分は「ジン」と呼ばれ、自然の厳しさや、葉の緑や幹との色彩的な対比を示す見どころとなる。

庭園にある盆栽は樹齢300年、古いものだと1000年というものもある。これらは「山採り」の木と呼ばれ、かつて国内の自生地から採取して、盆栽として育てられたものだ。現在は山採りがほぼできなくなっており、これらの展示品は非常に価値が高い。一方では日本の盆栽の材料枯渇が課題となっている。「だから山採りできる海外で盆栽が盛んになっているという現象もありますし、日本では若い木を仕立てる技術力がますます重要性を増していますね」と田口さん。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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