ある時、講座の後に近くのイタリアンレストラン「グースケ」に立ち寄ると、食後のデザートが江戸時代のお猪口に盛り付けられて登場した。聞けば、多津衛民芸館所蔵のお猪口をまちのお店に貸し出す民芸館発のプロジェクトだという。
へえっ、民芸館のものってデザート盛って食べていいんだ……!
その後も多津衛民芸館は、それまで私が持っていた「民芸館」の概念を覆し続けた。地元のつくり手によるマルシェが開催されたり、イスラエルから来日したダンサーのお話を聞く会場になったり、プーマのヘッドクリエイティブデザイナーが展覧会をしたこともあった。
若い人からお年寄りまでが出入りする様子をみて、いつしか私自身も時折足を運ぶようになり、先日は、館内にある喫茶スペースで待ち合わせて友人とコーヒーを飲んだ。
あれれ、待てよ。民芸館ってそういう場所だっけ……?
ふと我に返った私は、改めてこの民芸館について調べてみることにした。
公式サイトによると、多津衛民芸館は1995年、旧望月町出身の教員である小林多津衛が99歳の時に賛同者らと設立。教職の傍ら民芸に傾倒した小林の蒐集品を展示すると同時に、その思想を受け継いでいくことを目的としている。看板に掲げられた「平和と手仕事」は、小林の思想の象徴だという。
なぜ「平和と手仕事」なのか。そして、どうして民芸館でありながら、こんなに自由なのか。