
船生さんは、籠を編む前に、まずデザイン画を描く。
乱れ編みという節をあえて生かした編み方と花のコサージュを組み合わせたり、市松模様と六角編みと乱れ編みを組み合わせたり。古くは江戸時代から伝わる編み方を自在に組み合わせ、現代的な美しさを持つデザインに昇華していく。「こういうことをする作家は、意外と少ないのかもしれません」と船生さんは言う。
「実は僕には師匠がいないんです。すべて独学です。だから王道から外れている部分もあるし、もしかしたら邪道だと思う人もいるかもしれません。でもだからこそ、好きなことを自由に形にできるという強みもあります」
工房では籠バッグの修理も請け負っている。船生さんは自分の作品に限らず、他の作家の籠も引き受ける。
「他の作家さんの籠まで受け付ける工房はあまりないと思います。でも他の作家さんの編み方を見るのは、とても勉強になるんです。技術を盗むというと聞こえが悪いですが、参考になることがたくさんあります」
先人の技術や同業者の作品から学び、船生さんは独自の世界を創ってきた。
しかし、ここまで聞いてなお、船生さんがなぜ高いデザインセンスを持つのかという疑問は晴れなかった。しかし、生い立ちについて話を聞くと納得がいったのだった。