未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
289

100年以上使えて、3年で土に還る―― 信州、大町で生まれる山ぶどう籠バッグ、世界へ羽ばたく

文= 柳澤聖子
写真= 柳澤聖子(表記があるもの以外すべて)
未知の細道 No.289 |25 September 2025
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#5僕には師匠がいない

船生さんは、籠を編む前に、まずデザイン画を描く。

船生さんのデザイン画(左)と出来上がった作品(右)。題して「乱れ牡丹」。 写真/山葡萄籠工房

乱れ編みという節をあえて生かした編み方と花のコサージュを組み合わせたり、市松模様と六角編みと乱れ編みを組み合わせたり。古くは江戸時代から伝わる編み方を自在に組み合わせ、現代的な美しさを持つデザインに昇華していく。「こういうことをする作家は、意外と少ないのかもしれません」と船生さんは言う。

市松模様と、六角編みと乱れ編みを組み合わせた籠バッグについて説明する船生さん

「実は僕には師匠がいないんです。すべて独学です。だから王道から外れている部分もあるし、もしかしたら邪道だと思う人もいるかもしれません。でもだからこそ、好きなことを自由に形にできるという強みもあります」

工房では籠バッグの修理も請け負っている。船生さんは自分の作品に限らず、他の作家の籠も引き受ける。

「他の作家さんの籠まで受け付ける工房はあまりないと思います。でも他の作家さんの編み方を見るのは、とても勉強になるんです。技術を盗むというと聞こえが悪いですが、参考になることがたくさんあります」

ラックに並べられた修理受付中の籠バッグたち。年間300個以上もの修理依頼が全国から届く。現在も3ヶ月待ちの状態が続く。

先人の技術や同業者の作品から学び、船生さんは独自の世界を創ってきた。
しかし、ここまで聞いてなお、船生さんがなぜ高いデザインセンスを持つのかという疑問は晴れなかった。しかし、生い立ちについて話を聞くと納得がいったのだった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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