未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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100年以上使えて、3年で土に還る―― 信州、大町で生まれる山ぶどう籠バッグ、世界へ羽ばたく

文= 柳澤聖子
写真= 柳澤聖子(表記があるもの以外すべて)
未知の細道 No.289 |25 September 2025
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#9不思議と心が落ち着く、籠編み

籠編み教室は、横のつながりを作りたいと2015年頃から始めた。告知は特にしていないが、毎月 隔週の土日に、口コミや紹介で5~6人が集まる。まったくの初心者もいれば、長年の愛好家まで幅広い生徒が通い、その発想や斬新なアイディアから、船生さんが学ぶことも多いという。

そもそも山ぶどう籠バッグは、どのように作られるのだろうか。

山で採った山ぶどうの皮は「原皮」と呼ばれる。この原皮を、まず3ヶ月から数年かけて、乾燥・熟成させると、一番外側の層である「一番皮」がしっかりと定着する。この原皮を濡らして、丁寧に切り裂いてリボン状のひごに加工する。

中央の太いものが、原皮。右側の細いリボン状のものが、乾燥したひご

「皮をなめして加工し、均一なひごを作るのが最も難しい工程で、作品の仕上がりの7割がここで決まります。教室では、加工済のひごをお渡しするので、どなたでも気軽に挑戦できるんですよ」

13時、教室の開始時間になると、生徒やスタッフ、お弟子さんたちが次つぎと集まってきた。工房内の熱気は高まり、エアコンの効きが追いつかないのでは? と感じるほどになった。

私も、少しだけ籠編みを体験させてもらった。水で湿らせたひごを木型に合わせ、2本ずつ飛ばして編む「網代(あじろ)編み」だ。湿らせたひごに触れると、不思議と心が落ち着いた。編み進めると、ピタっと決まる瞬間がある。その感覚は思った以上に気持ちがよく、もし通える場所に工房があったら、絶対に通いたいと思ったほどだ。

木型に合わせて、ひごを規則正しく編み込んでいく。

隣の席で籠を編む女性は、籠編みが趣味だというベテランさんだ。「ここを見つけるまでは、福島まで編みに行っていました。今は、近くで学べて助かります。籠編みにすっかりはまってしまって、家にはすでに20個くらい籠があるんです」と嬉しそうに教えてくれた。

工房のなかでは、次々と生徒さんから船生さんに声がかかり、軽やかに動き回っていた。

工房で開かれる籠編み教室の様子
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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