
長野県大町市
2023年、フランス・パリで開かれた国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」。世界の名だたるトップブランドの担当者やバイヤーが足を止めたのが、信州の山で育つ山ぶどうで編まれた「籠バッグ」だった。森から得た素材を自らの感性で編み、唯一無二のデザインへと昇華させるのが、長野県大町市に工房を構える船生憲享(ふにゅう のりゆき)さんだ。籠が生まれるまでの物語を聞いた。
最寄りのICから【E19】長野自動車道 安曇野ICを下車
最寄りのICから【E19】長野自動車道 安曇野ICを下車
「この蔓(つる)はリースにできるね。少しもらっていきましょう」
もう10年以上前になるが、友人と一緒に山登りに出かけたときのことだ。友人が木の上からぶら下がる葛(クズ)の蔓を手際よく束ねると、あっという間に美しいリースができ上がった。それ以来、山の恵みから生み出されるものに特別な魅力を感じてきた。
森で育った山ぶどうの蔓で編まれた籠バッグがあると教えてくれたのもその友人だ。
「丈夫で100年以上もつし、使うほどに艶が出て素敵なの」
その言葉が、ずっと心に残っていた。
昔から日本では、竹やアケビ、クルミなどを利用した籠やザルが暮らしの道具として使われてきた。なかでも、山ぶどうの籠バッグは1つ10万円以上するものもあるほど、とりわけ希少で高価な存在だ。籠について、もっと知りたいと思い情報を探すうちに、出会ったのが山葡萄籠工房・船生憲享さんの作品。斬新で洗練されたデザインに、思わず「かわいい!」と声が漏れた。
調べてみると、2023年にはパリの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に初出展。今や世界のトップブランドからも注目を集めているという。
私は籠作りの現場を見てみたくなり、工房のある大町市へと向かった。